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端唄三味線教室「朝川会」主宰 朝川玲伎さん

ロックバンドから三味線へ
運命の出会い

「端唄」という音曲をご存知でしょうか。読みは「はうた」。江戸後期を中心に、庶民に広く愛され歌われた三味線音楽のひとつで、言うならば流行歌。三味線をメインに太鼓や小鼓、笛などの鳴り物を入れて、にぎやかに演奏されることが多いようです。代表的な曲には「梅は咲いたか」「奴さん」など。耳にしたことがあるというかたもおいでになるかもしれませんね。
今回ご登場いただくのは、そんな端唄に魅せられて故郷の新潟と東京で「端唄三味線教室 朝川会」を主宰しておいでの朝川玲伎さん。取材当日はグリーンの絽の着物に白い帯という涼やかないでたちで迎えてくださいました。

鉄道好きの聖地として知られる新潟県新津市(現在は合併されて新潟市秋葉区の一部)で生まれ育った朝川さん。お父様の影響で幼い頃からクラシックに親しみ、幼稚園の行き帰りに「乾杯の歌」「白鳥の湖」を聴ききつつ、ピアノのレッスンに通われていたとか。そうして培われた音楽への興味はやがてビートルズやカーペンターズに移り、音楽活動に傾倒していきます。中学時代にはキーボードを担当してバンドを結成、高校になってからはロックバンドのドラマーに転向されます。演奏する楽しさは大学時代を経て医療機器メーカーの会社員になっても継続、ロックな日々を過ごされます。がしかし25歳の時、朝川さんはバンド活動を停止します。「急にね、もういいかなって思っちゃったんです(笑)」

それから10年ほどの間、音楽とは無縁の生活が続き、山登りに夢中になっていたという朝川さんでしたが、ある時友人に誘われて出かけたお店で運命の出会いを果たします。それが三味線。「ロックを辞めて以来、いろんな音楽を聴いてみたんですが、どうもピンと来なくて……。でも三味線は音色を聴いたとたんに、あ、こんな面白いものがあったのかと思いましたね」。ロックから端唄、ドラムから三味線、180度異なるように思えますが、実はロッカーだった20代の頃からなぜか江戸ものや神社仏閣に惹かれていたという朝川さん。どうやら三味線とは運命的な出会いだったようです。

(左上)まとめ髪も粋な朝川さん。ロック時代はカーリーヘアだったとか
(右上)★ボランティア演奏を主体に活躍する新潟教室のユニット「たまちゃんずプラス1」
(左下)★6月に行われた東京教室研鑽会。出演者揃い踏み
(右下)鳴り物のひとつ。小鼓の前で

端唄の魅力は自由なところ。
「よきように」楽しむことが一番

こうして三味線と出会った朝川さん。思い込んだらまっしぐらの性格は変わらず、早速端唄に取り組み始めるうちに、「教えてほしい」という人が一人またひとり……。その後新内(浄瑠璃の流派の一つ)を人間国宝である鶴賀流11代家元鶴賀若狭掾に師事。さらに本格的に端唄と三味線に向き合っていきます。そんな日々を過ごすうち、気がついたら新潟と東京に教室を構え、今や10歳から88歳(!)までそれぞれの教室で30人以上、合わせると約70人ものお弟子さんを抱えるまでになっていたと朝川さんは笑顔で語ります。
朝川さんに端唄の魅力を伺ったところ、返ってきた答えが「とにかく好きにしていいんです」と。
クラシックなどの洋楽と異なり、端唄には音の高さやスピードの指定がありません。同じ曲でも唄い方は人によってそれぞれでよいのだとか。例えば、「〽梅は咲いたか」という曲を、しっとりゆるやかに唄っても、にぎやかに合いの手を入れてもノープロブレム。その場を楽しんでその時唄いたいように唄うのがなによりで、そこには競い合ったり比べ合ったりする価値観は皆無なのだそうです。以前、鳴り物の太鼓をどう演奏すればいいのか相談した朝川さんに、当時お稽古をつけていただいていた鳴物の先生がおっしゃった言葉が「よきように」。意味は「(太鼓が)入らないより入ったほうがいいと思ってもらえればどういう風に演奏してもいい。でもないほうがよかったねとは言われないようにね」とのこと。この大らかさ、なんだか遠くにあった端唄の世界が、どんどん楽しく身近になったように思えてきます。

現在、朝川さんの教室では唄や三味線のお稽古に加えて、江戸に関する勉強会も開催しておいでです。これまでの内容は「江戸の暮らし」「江戸の恋」といった座学から、端唄に登場する場所に実際に行ってみる(!)というフィールドワークまで盛りだくさん。こうして江戸の世界観や生活感を肌身で感じることによって、端唄の歌詞の理解が進み、唄に深みが出るのだとか。まさにアクティビストな朝川さんならではの発想です。
今後はもっと大勢のかた、とりわけ若いかたに端唄を知ってほしいという朝川さん。ライヴの回数を増やしてリアルに聴いていただく機会を増やしたいと話されます。江戸から続く伝統の邦楽をしなやかに楽しく語り継ぐ朝川さんにすっかり魅了されたひとときでした。

***
朝川さんから教えていただいた「さのさ」。いろんな歌詞があるそうでそのうちの一つ。

〽木曽の御嶽山がね 木曽の御嶽山が富士山に惚れて
仲を取り持つ駒ケ岳 できた子どもが
ネエ槍ヶ岳 それ見て吹き出す浅間山

(左上)端唄で用いるのは細棹の三味線
(右上)見た目もあでやかな締太鼓
(左下)★お稽古風景。お弟子さんには男性のかたも多数
(右下)うぐいすの鳴き声が出るうぐいす笛

【編集後記】

朝川さんのまさかのロックな過去にはビックリ。因みに、三味線を習い始めた頃は着物の着付けもできず、正座もままならなかったとか……。現在のしっとりと粋な姿からは想像ができません。でも、「楽しむのが何より!」というキュートな笑顔の奥にロックの魂は宿っているような(笑)。
「朝川会」秋の研鑽会は10/21(土)を予定とか。どなたでもどうぞ。とのことなので、ご興味あるかたはお出かけしてみてはいかがでしょう。
※研鑽会詳細は、下記オフィシャルサイトをご覧ください。

端唄三味線教室 朝川会 http://www.asakawatamaki.com/

取材:「BEAUTY TALK」編集部
★写真提供:朝川会
撮影:長谷川 朗

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