7歳の時に出会った「ダンス」が私の人生を大きく導いてくれた気がします。 舞踊家・シンガー 小川 麻子

「Please」が生み出すこども達とのコミュニケーション

JR京浜東北・根岸線「山手」駅から、住宅街の中の急な坂を登りきった一角にある「横浜 カントリー&アスレティッククラブ(通称YC&AC)」。白い建物の前に緑のグラウンドが広がり、その向こう側には海が見えるすばらしいロケーションを持つここは、1868年にイギリス人によって設立された会員制のスポーツクラブで、日本のラグビーの発祥地でもあります。
このYC&ACの中のスタジオで、小川さんのクラスが、週に1度行われています。生徒はさまざまな国籍を持つ、8歳から11歳までの女の子ばかり13名。レッスン開始の時間が近づくに連れて、1人、また1人とこども達が集まりはじめ、かわいいおしゃべりの声が重なって、スタジオはどんどんにぎやかに。

今、みんなが頑張っているのが、クリスマスに行われるパーティーで発表する創作ダンス。ご存じ「アナと雪の女王」の主題歌「Let it go」に合わせた小川さんの振付に、サークルを描いたり、ステップを覚えたり、全員で作品を作り上げていきます。
まずはレッスン前のミーティング。クラスは、基本的には英語ですが、時折「その言葉、わかんない!」と、かわいい声が上がると、日本語で説明するという形で進んでいきます。それにしても、みんな熱心に……聞いてない!(笑) 友達同士でおしゃべりする子たちがいれば、いきなり歌いだす子もいて、ともすれば、小川さんの声が聞こえなくなってしまうほど、スタジオはこども達のパワーでいっぱいです。

「以前はね、言うことを聞かせようと、上から押さえつけるような言い方をしていたこともあったんです」と小川さん。でも、それではますます騒がしくなってしまうだけ。長年の経験から得たこども達を集中させるコツは、「おとなとして扱うこと」なのだそう。頭ごなしに言うのではなく、「Thank you」「please」「help」を上手に使うことで、こども達は話を聞く姿勢を持つのだとか。なるほど。

(左上)山手の丘に建つYC&AC。青い空に緑の芝生が映える
(右上)レッスンに入る前のミーティング
(左下)元気いっぱいのこども達。列に並ぶだけでも大騒ぎ 
(右下)こども達は小川さんが大好き。とにかくすぐ寄っていく

大切なのは、正確に踊ることより、楽しく踊ること

3人姉妹の真ん中で育った小川さんは、小さい頃は自分自身を表現するのが苦手だったのだそうです。「2歳上の姉と4歳下の妹が、どちらも自己を主張するタイプだったので、なんとなく私は自分が出せなくて…」。でも7歳の時、「モダンダンス」に出会ったことで、小川さんは初めて自分を表す方法を見つけます。 
そして、1983年、映画に因んで開催されたダンスコンテストで、全国から集まった多くのライバルを破って、見事優勝。ご褒美のアメリカ招聘をきっかけに、翌1984年から渡米し、小川さんは本格的にダンスを中心とした人生を歩み始めます。アメリカから帰国後は、フランス給費生に選ばれたことで、渡仏も経験、欧米での活躍が続きます。フランスから戻った後は、ダンスを通じてさまざまな舞台やTVCMで活躍。現在は、YC&ACでのレッスンを始め、いくつものダンスクラスを主催しながら、ご自身でのライブ活動を精力的に行うという、なんとも忙しい日々をお送りです。

さて、スタジオでのレッスン。こども達は本当に楽しそうに「Let it go」に合わせています。が、それはきちんと正確に、というよりは、一人ひとりが思うように小川さんの振付を楽しんでいるかのように見えますが…。
「それでいいんです。きちんと踊ることが必要なのではなく、ダンスを楽しむことが大事なんです。とにかくリズムに乗って身体を動かすこと、そうやってダンスをすることの楽しさを、身体でわかってもらえれば十分なんです」と、小川さんは笑います。
レッスンに来ているこども達の多くは、親御さんの仕事の都合で、たいていは4~5年くらい、早い子は2年くらいで次の国に旅立ってしまうのだとか。
「彼女たちが大きくなった時、そういえば、昔日本という国でダンスを習って楽しかったな、って、何となく思い出してくれれば幸せですね」。小川さんの笑顔が一層やさしくなりました。

クリスマスパーティーまで、あと少し。小川さんと13名のこども達、発表会でのご成功をお祈りしています!

(左上)レッスンの時は、必ずこどもの目線で寄り添う
(右上)思い思いの格好でミーティングに参加するこども達
(左下)一人ひとりの個性に合わせてアドバイス
(右下)レッスン終了後のとっておきスマイル!

【編集後記】

さまざまなかたとのコラボも多い小川さん。今年12月には、新宿矢来町でダンスライブ「る・たん」を予定。「る・たん=le temps」はフランス語で「時」という意味。ライブでは、永田砂知子さんという音楽家とコラボレーションされるのだそうです。ぜひ1度、小川さんが生み出すダンスの世界を楽しんでみては。
※ライブ詳細は、小川さんのHPをご覧ください。

ドリームワークス 小川麻子舞踊研究所
http://dreamworks.chu.jp

取材:「マリアンナ」編集部
撮影:長谷川 朗

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肌の自己治癒力である「スキンホメオスタシス」を高め、肌本来の美しさを引き出す「マリアンナ」。
目指すのは、「美しく」「健やか」な肌を通じて、いきいきと輝く自分を実現していくこと。
このコーナーでは、「美」や「健康」に関わるさまざまなジャンルで活躍する素敵な女性をご紹介していきます。のびやかに活動する彼女たちを通じて、多種多様な「美しさ」をお楽しみください。