ふろしきに織り込まれた豊かな日常と美しい感性を「今」に合わせて伝えたい。アートディレクター 山田悦子

知れば知るほど、深く楽しいふろしきの世界

閑静な住宅地に見上げるほどの銀杏の樹がそびえ立つ―ここは世田谷にある「代田八幡神社」。初冬の空気が凛と張り詰める境内に、一人、また一人とお着物姿の女性が‥。そう、今日はこの神社の境内にある能楽堂で、着物研究グループ「衣の会」が主催するふろしきの講座が開催されるのです。参加者はなんと80名。広い畳敷きの部屋に、思い思いの着物や帯をまとった参加者さんが講座の開始を待つ様子は、何とも華やかで圧巻です。

そこに、にこやかに現れたのが、今回ご登場いただく山田悦子さん。東京は渋谷区神宮前にある日本初のふろしき専門ショップ、京都 和文化研究所『むす美』の陣頭指揮をとりながら、ふろしきのよさを国内外に伝えるエヴァンジェリストとして、TV出演や講演などに忙しい日々を過ごしておいでです。この日の講座は、ふろしきの柄が持つ意味や使い方などの基本的な知識から、さまざまな結び方や包み方(四角い箱から、なんとワインボトルまで!)をお話されるのだとか。

講座が始まり、「ふろしき」という名前の由来、描かれている柄の意味、ヨガマットが運べる結び方など、山田先生から語られるふろしきの話に、参加者さんはどんどん惹きこまれていきます。
「ふろしきの柄って、そういう意味があったのね‥」「この結び方、プレゼントにぴったりじゃない!」
会場からは弾んだ声が次々に上がって、2時間の講座はあっという間に終了してしまいました。

左上:天正19年(西暦1591年)から続く由緒正しき代田八幡神社
右上:ふろしきの結び目についてお話し中の山田先生
左下:華やかな結び方が贈り物にぴったりの「花包み」
右下:参加者さんの笑顔と熱気に包まれた会場

ふろしきを通じて伝えたい日本の心

京都で創業70年という老舗のふろしきを作る会社を実家に持つ山田さん。でも、本格的にふろしきの仕事を始めたのは2005年「むす美」が東京に開店した時からだそう。前職がテーブルコーディネイトの仕事をされていたという山田さんの転機になったのが、石川県の地場産業を活性化するというプロジェクト。工芸品や伝統産業の作り手側とマーケットのズレに気付き、ある種の焦りのようなものを感じ始めたといいます。

「商品自体はすごくいいにもかかわらず、発信の仕方や見せ方が実際のマーケットに合ってないんです。まったく伝わっていない、ズレてしまっている。ああ、なんてもったない。このままでは伝統産業がダメになってしまう! 何とかしなきゃ! と思ってる時に、ふと気がついたんです。あれ? 伝統産業って、ウチ(実家)もだ‥」。
落語のオチのようなこの展開の後、山田さんは現社長の実弟さんに、履歴書を提出して頼み込み、改めてご実家である山田繊維株式会社に入社され、現在に至ります。

山田さんの、伝統産業を守りたいという熱い思いとテーブルコーディネイター時代の豊かな経験は、さまざまな形で実を結んでいきます。例えば、来春から使われる高校の英語の教科書に、なんとふろしきが登場。英語をツールとして、ふろしきの歴史や使い方を学ぶのだとか―素敵ですよね。また、先に東京で開催されたIMF・世界銀行年次総会の政府展示エリアに出展。海外の方々にふろしきの魅力を伝えられたそうです。

「ふろしきには、日本人の美意識や先人の知恵、そして日本の心が込められています。でも、お正月の行事より、クリスマスの方が一般的になっている時代、ライフスタイルの変化は止められません。ならば、単にそれを嘆いているだけではなく、時代に合わせた魅力あるデザインや、使い方を伝えていくことが大事なのではないでしょうか。そして、それは必ずや、次世代に自国の誇りを受け継ぐこととなると信じています。」。

シンプルという言葉を具現化したような、たった1枚の布。でも、それは驚くほど豊かな模様と色彩を持ち、ある時はバッグに、ある時はひざ掛けにと変幻自在に形を変えていきます。伝統産業だからと頑なになるのではなく、すんなり、ふわりと時代を超えていけるふろしきの多様さは、「洋」の仕事を経て、「和」の仕事に目覚めた山田さんに相通ずるものがあるようです。

左上:艶やかな紅葉を思わせる「むす美」のディスプレイ
右上:ワインは2本の方が結びやすいのだとか
左下:「アディダス」の記念行事用につくったロゴ入りふろしき
右下:山田さんが手がけた著書の数々

【編集後記】
原宿・東郷神社から歩いて5分ほどのところにある山田さんのショップ「むす美」。日本で初めてのふろしき専門店とのことですが、明るい店内はポップで可愛いディスプレイで彩られています。中にはこんなキュートなふろしきまで!! これからお歳暮やクリスマスプレゼントと贈り物の季節がやってきますが、中身に加えてふろしきをプラスすることで一層贈る心が伝わるような気がします。…と、すっかりふろしきならぬ山田さんの魅力に包まれた取材なのでありました。

京都 和文化研究所 「むす美」※「むす美」は京都 和文化研究所の登録商標です
http://www.kyoto-musubi.com/

山田繊維株式会社
http://www.ymds.co.jp/
問い合わせ先:TEL:03-5414-5678 FAX:03-5414-6788
e-mail:info@kyoto-musubi.com

取材:「マリアンナ」編集部
撮影:末松正義
撮影協力:「衣の会」/代田八幡神社

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