目指すは南極。最強の辺境で、大好きな風を書くのが目下の夢。 風書家 月風かおり

「風書」との出会いは、ハーレーで駆け抜けた北米大陸

本年3月。東京青山の草月会館にて「マリアンナ」のお客様をお招きしてカルチャースクールが開催されました。参加者さんのテーブルに用意されているのは墨と筆。と、くれば先生のお手本をその通りになぞるお習字…と思いがちですが、いいえ違います。この日のテーマは「風書」。その日、その時、自分が感じたことを墨で表現するという創作のスタイル。それにはお手本はありません。それどころか「こうしなければいけない」というルールもないのです。教室が進むにつれて、最初はとまどっていた参加者さんの表情が、どんどん柔らかく、楽しくなっていくのがわかります。
―「風書」、この少し耳慣れないこの言葉を考案されたのが今回ご登場いただく風書家・月風かおりさんです。

7歳で書を始め、20年以上に渡って、芸術や実用、両分野の「書」に携わり、伝統的な書の活動に取り組んでこられた月風さんが、「風書」というスタイルを確立したのは2002年。それまでの作品創作に行き詰まりを感じた月風さんは北米大陸横断の旅に出ます。相方はハーレーダビッドソン。ニューヨークを出てロサンジェルスまでの5500kmを、来る日も来る日もただまっすぐに伸びる道を走り続けた14日間のこの旅で、月風さんは大きな発想の転換を得たといいます。
「それまでの私は、最初に“書在りき”だったのです。墨を使って何を書くのか、ということですね。でも、何もない砂漠の中をひたすら走り続けるうちに、その大陸感に圧倒され、地球から大きなエネルギーをもらっていることに気付きました。心が震えるほどの大きな感動でした。その時、感動がまず先にあって、それを形にするために、私には墨があるんだ、と気がついたのです。」

左上: 3月。草月会館でのひとコマ。弊社山口と(撮影:平田洋子)
右上:「感動を表す手段が墨なんです」と月風さん
下:「風書」のきっかけとなった北米大陸横断時の作品。題名は「落日」

風に会い、人につながる風書の旅

この時の感動を「風書」と名付けた月風さんは、次々と「風」を求めて活動を始めます。アラスカ半島、アフリカ・サハラ砂漠、そしてネパールヒマラヤ、チベットなどの辺境を訪ねる旅から、平和を発信し、鎮魂を願う原爆ドームやアウシュビッツ絶滅収容所での風書まで。多岐に渡る活動を重ねるうちに、月風さんはあることに気が付きます。
「地球の壮大な風を求めて旅に出るのですが、旅の最後は『人』に行き着き、人から感動をもらうのです。風土、という言葉があるように、風は土とその土地の気候や地形を醸成し、その中で生活する人の風貌や風体を生み出していきます。風は人につながるんですね。」

人からもらった感動を、今度は人にも返したい。という月風さん。昨年の東日本大震災後には、風書を通じた国内外のさまざまな復興支援プロジェクトに関わりつつ、自らバイクボランティアとして被災地に物資を届け、お年寄り世帯の片付けを手伝われたそうです。

まさに風のように活動を続ける月風さん。これからやりたいことは? という質問に返ってきた答えは、なんと「南極に行きたいんです。」しかも観光ではなくて、観測隊員として、観測船「しらせ」に乗船することを目指しているのだとか。現在、南極は天文、気象、地質、生物学などの観測を行うために、科学者や研究者が向かうフィールドとされていて、「クリエイティブ」な活動とは無縁の世界。でも、月風さんはあきらめません。実は2010年、南極に関する観測や研究を行っている国立極地研究所が主催する第4回南極観測シンポジウムにて、観測50年の歴史上初となる芸術関連の発表をされたのだとか…。テーマは「南極の“風”を書く~墨による地球環境保全を南極大陸から発信」。異分野の風を南極に吹き込むような発表は、シンポジウムにも新鮮な風を巻き起こしたはず。たおやかな中に強靭なパワーを秘める月風さんに、南極の風を「風書」する日が1日も早くおとずれることをお祈りしています!

左上:南極大陸への準備も兼ねた八ヶ岳での元旦風書
右上:震災のバイクボランティアで宮城県南三陸町へ
左下:屋外での風書に使う文鎮代わりの石ころたち
右下:白鳥や孔雀などの獣毛。珍しさに初対面でも会話が弾むとか

【編集後記】
愛媛県出身の月風さん。10歳の頃、台風でご実家が全壊、という大変な経験をされたそうです。でも、その時から形を持たないのに、家屋を吹き飛ばしてしまう風の威力に魅せられ、以後台風が来る度に外に出ては風の正体を確かめるんだ! と、暴風雨に打たれておられたとか…。もしかすると、月風さんはその頃から風の神様に出会い、恋に落ちてしまったのかもしれません。この日の取材は夏の雨が降る夕刻。やみ間を縫って屋外の撮影に臨んだ時、一瞬月風さんの回りを涼やかな風が吹き抜けたと感じたのは、どうやら気のせいではなかったようです。

月風かおりオフィシャルサイト
http://www.tsukikaze.com/index.html
リーフレット
http://www.tsukikaze.com/profile/leaf/leaf.html
問い合わせ先:mail@tsukikaze.com

取材:「マリアンナ」編集部
撮影:長谷川 朗(元旦風書・バイクボランティア除く)
撮影協力:あかね食堂

<< vol.6 | TOP | Vol.8>>

肌の自己治癒力である「スキンホメオスタシス」を高め、肌本来の美しさを引き出す「マリアンナ」。
目指すのは、「美しく」「健やか」な肌を通じて、いきいきと輝く自分を実現していくこと。
このコーナーでは、「美」や「健康」に関わるさまざまなジャンルで活躍する素敵な女性をご紹介していきます。のびやかに活動する彼女たちを通じて、多種多様な「美しさ」をお楽しみください。